雑記

(Twitterに書くには長すぎる感想)

感想文(仮)【KEN THE 390/Be Natural】

 

1.はじめに

 KEN THE 390が今年の夏に出した新しいEP『THINK!』に収録されている、Be Naturalという曲がある。とある番組でDJ PMXというレジェンド級のDJと一緒に制作した曲とのことだった。この曲を聴いたわたしは、ああ、綺麗になりたいな、そう思った。
 綺麗でありたいと思うのが女性の義務なのかと言われれば、そうではないと思う。女性蔑視やミソジニーに対する批判、啓蒙活動が盛んになってきた今日において、女性だからという理由で綺麗になろうとするのは違うと声を大にして言いたい。では、どうして綺麗になりたいと思うのか。目的は何なのか。この曲を聴いて、綺麗になりたいと思うたびにぼんやりと考える。

 

2.感想(仮)

 そもそも、この曲を聴いて綺麗になりたいと思うスイッチは「いつもラフなメイクでどんな時もOK」というフレーズである。この曲を、この曲と認識して最初に聴いたのは7月のタワーレコード渋谷だったと思う。わたしは普段どおりきっちり化粧をして、マイクを握る彼を観ていた。だからこそ、何となく申し訳ない気持ちになって、ラフなメイクでもOKと思ってもらえるような──それが誰に対してなのかはよくわからないけれど──人間になりたいな、と思ったのだ。
 2ヴァース目のリリックでは「君は君 それだけでパーフェクト」「他の誰か比べるなんてナンセンス」「そのままの君でいて」と、改めて羅列すると聴いているこちらが恥ずかしくなってくるようなフレーズが並ぶのだが、多分わたしはこの歌詞のように誰かに全幅的に自分を受け入れて欲しいのだと思う。あるいは、認められたいのかもしれない。そして、自分がそれをされるに値しないと認識しているから、「綺麗になりたい」と感じるのだろうと思う。たとえそれがこの歌の指す「そのままの君」と正反対であるとしても。

 

 どうしてだろう、と思う。「そのままの君」を好きになってくれる人を探せばいいのだと自分でも理解しているのに、なぜだかわたしはこの曲を聴くと綺麗になりたいと思う。多分、感想というのはそういうものなのだろう。こんな風に好きになってくれる人が欲しいなと思う人もいるだろうし、わたしみたいに綺麗になりたいと思う人もいる、そうやって受け止め方が違って、あとはそれを言葉にするかしないか、言葉になったものがいわゆる「感想」なのだ。
 そもそもわたしの感想の根底には「こんな風に好きになってくれる人が欲しい」があるのだ。そのために、まずは自分が綺麗にならないといけないと思うから、最終的な感想が「綺麗になりたい」になる。これは多分わたしの考え方に起因している。というのも、わたしは人生で発生するほとんどの問題は自分の努力で解決できると思っている(そして、どうにも解決できない問題というのは、おそらく本来わたしに振り当てられるべき問題ではなかったのだろうと諦める)ので、この曲を聴いたことで直面する「そのままの自分を好きになってくれる人がいない」という問題について、努力しようとした結果が「綺麗になりたい」なのだ。
 人によっては、そんな人と出会えるようにコミュニティを拡げるなんていう方法をとるかもしれないし、既にそんな風に愛されている──羨ましい限りだが──人がこの曲を聴いた感想はきっと全然違うものなのではないかとも思う。

 

 いろいろと話が脱線した気がするし、果たしてこれは感想なのかという疑問も浮かぶのだけれども、そもそもこの曲自体が「綺麗」なのだ。音楽の知識が全くないわたしには「イントロの○○が~」だとか「フックに入るときの**が~」なんて専門用語で語ることはできないのだが、メロディがとても綺麗なのでまずは一度聴いてからこの感想文を読み返してみるのがいいと思う(このブログに辿り着いている時点で聴いたことある人がほとんどな気はするけれど)。
 本来の感想というのはそういう技術的な部分にも触れるべきなのかもしれないが、コトバンクいわく【物事について、心に感じたことや思ったこと。】らしいし、英語でもimpressionだとかthoughtsを使うものなので、間違ってはいないということにしておいて欲しい。

 

3.おわりに

 さて、ここまで書いたので最初にちょっと触れた理由がわかると思うのだが、わたしが感じた「綺麗になりたい」についてはわたしが女だからではないのである。そういう人間なのだ。仮にわたしが男だったとして、やはり目的があって、それを達成するために「綺麗である」ことが必要なら、わたしは「綺麗になりたい」と考えるだろう。
 ただ、選択肢として「綺麗になる」が浮かぶのは女性だからなのかもしれない。そういう文化に触れて生きてきたからかもしれない。これについて書き始めると、曲の感想から大きく逸脱する上に、問題を提起するのに表題の楽曲を巻き込む形になるのでやめようと思う。
 とにかくわたしは面倒くさい性格の人間で、寄り道しがちな思考回路をしているということだけ、最後に言い訳として記しておく。

 

おしまい